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前田陽一郎
(立命館大学)
片上大輔
(東京工芸大学)

「人間共生システム研究会」第2回研究会

参加報告 (開催案内のPDFはこちら

報告者:片上大輔(東工大)

日 時:2008年8月2日(土) 13:00〜17:00
会場:立命館大学 びわこ・くさつキャンパス
クリエーションコア1F第1教授会会議室
http://www.ritsumei.jp/campusmap/pdf/BKC_map_000.pdf

 8/2(土)に立命館大学 びわこ・くさつキャンパスにて,第2回HSS研究会が開催されました.今回は,通常の一般発表に加え,立命館大学の亀井先生のお力添えにより,立命館大学の仲谷善雄教授のご講演,立命館大学情報理工学部の研究室見学,最後に野外でのBBQ懇親会と,とても盛りだくさんの内容で,頭もおなかもいっぱいになりました.

会場の立命館大学
代表幹事前田先生による冒頭挨拶

 まず,仲谷先生の特別講演では, 「認知工学に基づく社会工学システムの構築」というタイトルで,主に認知コミュニケーション工学の4つの研究テーマについてご紹介を頂きました.

 1つは災害対策であす.これまでの情報技術は情報伝達が中心でしたが,実際には,避難指示が出されても避難しない人が多く,2割が避難すれば良い方だというお話がありました.つまり情報を受取った上で,「納得」しなければ人は行動しないという問題があります.この「納得」を支援する減災情報技術の開発を目的として行なわれている,観光客防災や,エージェントによる誘導システム,超指向性音響システムによる群衆分割制御などの紹介がありました.会場からも質問があり,指向性音響システムを使った応用など話が弾みました.

 2つめは,ITS(高度道路情報システム)の紹介で,主に遊び要素を取り入れた観光ナビの紹介がありました.通常ナビシステムは正確なほどユーザには有用だと思うのが普通ですが,仲谷先生によるとむしろ抽象的で様々な基準でかかれた観光地図を参考に迷ったという事実が,印象を深め,観光の楽しさを増す要素となりうるということで,あえて詳細なルートを示さず「迷わせるナビ」により,周辺環境と遊ぶ機能をユーザに提供するシステムを説明して下さいました.この発想に思わずうなってしまいました.

 3つめは,思い出工学の紹介で,災害等で思い出の品を失った被災者に思い出すきっかけを与え,思い出した内容を再構築できるシステム「YourStory」を紹介していただいた.思い出を支援するというこれまでにない試みで,会場からも質問が相次ぎました.

 最後に,感性工学の研究紹介で気分に応じた服や曲などの支援など,生活に密接した支援を行なっており,本研究会にも非常に近い話で興味深い内容でした.

今回のホスト亀井先生(立命館大学)
特別講演(仲谷先生(立命館大学))

 次に,情報理工学部の2つの研究室,知能情報学科の吉川恒夫教授の研究室と,メディア情報学科の田村秀行教授の研究室を見学させていただきました.吉川研究室では,力覚人工現実感技術をもちいた障害者支援のデモや,移動ロボットによる色追従制御などの動作デモがありました.また,田村研究室では,広視野電子作業空間のジェスチャ操作と協調作業(つまり,映画「マイノリティレポート」でトム・クルーズが行なっていたジェスチャによる情報操作)のデモがあり,実際に我々研究会のメンバーがレバーを握ったり,グローブをはめたりして体験させていただくなど,貴重な体験をさせて頂きました.

 その後,会場に戻り15:15から一般発表6件がありました.司会は,片上と,井上先生により行なわれました.電気通信大学の西野先生からは,従来の線形化やクラスタリングでは捨ててしまっていた非線形性をそのまま扱うような多次元ファジィ集合についてのご発表がありました.人間を扱う人間共生システムでは,多次元な人間をそのまま扱う提案手法は非常に興味深い内容でした.

一般発表の開始の挨拶
多次元な人間の西野先生

 富山商船高等専門学校の秋口先生からは,ユーザがもつ曲印象から楽曲を自動的に生成するシステムの発表があり,実際にデモにおいて作成された曲が演奏されました.楽曲は主にリズム,メロディ,ハーモニーの3要素で構成されており,それぞれをGAやNNなどのソフトコンピューティング手法を用いてユーザが入力する印象語から自動生成するというお話でした.ゲーム音楽を題材にというお話でしたが,演奏された音楽は,そのままゲームで使えそうなレベルの楽曲で,その完成度の高さが伺えました.会場からは多くのユーザが使うことを考えると,複数のユーザがそれぞれ似たような楽曲を生成しないような工夫があるとよいなどの質問がありました.

 東京電機大学の湯浅先生からは,擬人化エージェントによる発話交替における「話したいor話したくない」の意図を表出する「発話マインド」の研究に関する発表がありました.2人の擬人化エージェントの発話マインド表現による評価の紹介がありました.人間が無意識に発話マインドを読み取るその能力に驚くとともに,その応用性に将来性を感じました.会場からは発話マインドの高い人たちからの質問が相次ぎました.

ゲーム音楽を自動生成する秋口先生
発話マインドを表現する湯浅先生

 福井大学の本間さんからは,ブレインビルダーという簡易脳波計を用いて人間の情動を推定し判定するシステムの発表がありました.11人の被験者の計測結果を用いた推定結果の精度を測っており,比較的妥当である旨のお話がありました.これにより,ロボットが表出する情動と,ユーザが表出する情動のカップリングからなる一連の情動インタラクションが可能になり,今後非常に楽しみな研究であると感じました.

 同じく福井大学の加藤さんからは,情動行動学習システムにおけるストレス反応に関する発表がありました.従来では,ネガティブな情動行動は伝わりにくいため,ストレス反応を示す情動を定式化し行動として表現することで,人工物のストレス反応を表現し,それに対して感性評価を行なっていました.人間共生系における自律エージェントを考えた場合,人間のストレス反応を理解すること,そして,ストレス反応を表出することは今後重要になると思われ,その重要性をあらためて再認識しました.

 最後に,立命館大学の中岡さんからは,SOMを用いたグループ意志決定支援システムに関して発表がありました.感性評価とグループ意志決定を融合した支援システムでであり,SOMに表現されたユーザの評価状況を見ながらの支援により自動車購入をテーマとした評価実験を行ない,ユーザの満足度をもとに評価が行なわれていました.会場からは,SOMに表現される位置・距離関係の意味や,自動車購入タスクに対する質問などがありました.

ストレス反応表現の加藤さん
グループ意志決定支援システムの中岡さん

 最後に,代表幹事の前田先生から今年度のこれまでの活動報告と,今後の活動についての説明がありました.具体的には,WCCIでの報告,FSS,SCIS&ISISの開催予定,特集号の計画などの話がありました.また,北信越支部,関東支部と合同で行なわれる第3回HSS研究会や,FHHB合同ワークショップなど,今後の研究会の予定などの説明もありました.

 その後,亀井先生の研究室を見学し,串田さんから,共生進化エージェントによるポーカーゲーム研究の説明があり,ここでも,戦略交替と共進化の違いなど活発な質疑応答が行なわれました.

 最後に,立命館大学のCキューブにて,懇親会BBQが行なわれました.亀井先生自ら食材を調理していただくなど大歓迎していだき恐縮するかぎりでしたが,最高のBBQ日和かつ食材も最高で会話も大いに弾みました.まさに至れり尽くせりの研究会だったと思います.

亀井先生自ら調理をしていただきました
至福の時間
遅くまで話が弾みました
きれいな夕暮れの中の議論は最高でした

プログラム(開催案内はこちら

13:00〜14:00 特別講演         司会:前田陽一郎(福井大学)
          「認知工学に基づく社会工学システムの構築」
           仲谷善雄 先生(立命館大学 情報理工学部 教授)

講演概要:認知工学の立場から、人間の心理・行動特性に基づいたシステムとのコミュニケーション方法をデザインしている。土地勘のない観光客を対象とした災害時避難誘導システム、わざと詳細なルートを教えない観光ナビシステム、色で表現する気分に応じた曲を提案する楽曲推薦システム、災害で失くした思い出の品の代わりにシステムが想起のためのトリガーを提示し、想起した思い出を他者とのコミュニケーションに利用する思い出再構築支援システムなどを紹介する。


14:00〜15:00 立命館大学情報理工学部の研究室見学

15:00〜15:15 休憩

15:15〜16:45 一般発表     司会:片上大輔(東京工業大学),井上博行(福井大学)
   15:15-15:30 「多次元な人間」
          西野順二(電気通信大学)
   15:30-15:45 「ソフトコンピューティング手法を用いた曲印象からの楽曲自動生成システムの構築」
          秋口俊輔(富山商船高等専門学校)
   15:45-16:00 「擬人化エージェントの発話マインド表現」
          湯浅将英(東京電機大学)
   16:00-16:15 「ファジィ情動推論システムのための人間の情動計測実験」
          本間雄仁(福井大学)
   16:15-16:30 「自律エージェントのためのストレス反応を有する情動行動学習システム」
          加藤 進(福井大学)
   16:30-16:45 「SOMによる感性商品購入のためのグループ意思決定支援システムの構築」
          中岡伊織(立命館大学)
   16:45〜17:00 ミーティング(今後の予定について)