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前田陽一郎
(立命館大学)
片上大輔
(東京工芸大学)

ファジイシステムシンポジウム(FSS2010)
企画セッション「人間共生システム」開催報告

参加報告

報告者:張坤,梅亮,滝僚平,山本壮太,一井亮介,高橋泰岳(福井大学)

日 時:2010年9月13日(月) 〜15日(水)
会場:広島大学 東広島キャンパス
FSS2010(http://www.fss2010.hiroshima-u.ac.jp/

2010年9月13日から3日間に渡り,広島大学東広島キャンパスにて,第26回ファジィシステムシンポジウムが開催された.3日間にわたり人間共生システムのセッションが5セッション組まれ,本研究会メンバーを含む22名の方々の発表があった. また,初日の夕刻には懇談会が開かれ総勢35名もの参加者があった.

写真1 会場エントランスの垂れ幕
写真3 HSSセッションの様子

人間共生システム1
日時:2010年9月13日(月)14:30-16:10
会場:D会場(広島大学L205)
司会:前田陽一郎(福井大学)
セッション参加者:約20人
報告者:張坤 <kzhang@ir.his.u-fukui.ac.jp>

MD3-1
Emotional Fitnessのための音楽聴取による運動強度制御
原 隆幸 (立命館大学大学院) ,串田 淳一 (立命館大学) ,○亀井 且有 (立命館大学)
人間の心の健康維持のためのEmotional Fitnessを指標とし,運動中に聴く音楽を制御することにより,非実験者の運動強度を制御できることを示した.音楽とそれに合わせて運動したときの心拍数の関係を求め,ファジィPI 制御の考えにもとづき心拍数を制御するための音楽切換えタイミングを提案した.トレッドミルを用いたジョギング実験を通して提案手法により心拍数をより自然に制御できることを示した.

MD3-2
人とロボットのインタラクティブ情動コミュニケーションにおけるロボットの有効反応モデル
○滝 僚平 (福井大学) ,前田 陽一郎 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学)
人とロボットが情動を伴う行動を基に双方向コミュニケーションを図る「インタラクティブ情動コミュニケーション」の実現を目指し,ロボットと人間が自然に意思疎通を図るため,ロボットに「情動認識」,「情動生成」,「情動表現」の3つの機能が必要である.
この研究ではロボットの情動行動に対する個人の嗜好分析を行い,その結果から人が求める情動行動反応を行う「有効反応モデル」を構築することで,ロボットがより高い対人親和性を人間に与えることを示した.

MD3-3
交渉対話事例に基づく交渉エージェントのしぐさ生成と評価
○片上 大輔 (東京工芸大学) ,池田 祐輔 (東京工業大学) ,新田 克己 (東京工業大学)
人間が交渉中に行うしぐさを観測し,そのしぐさの特徴量を基にエージェントにしぐさを実装し,生成されたエージェントのしぐさと人間のしぐさの印象評価比較を行い,その実験結果を紹介した.人間同士の交渉対話時に出現するしぐさを調査するため,交渉対話事例を収集し,交渉対話事例から,出現頻度の多いしぐさを抽出し,その特徴量をもとにエージェントのしぐさのモデル化を行った.

MD3-4
Emotional Fitnessのための加速度脈波を用いた運動後爽快感指標の提案
○山添 守史 (立命館大学大学院) ,串田 淳一 (立命館大学) ,亀井 且有 (立命館大学)
加速度脈波にフーリエ変換とコヒーレンス解析を用い,パワースペクトルとコヒーレンスから 求める運動後爽快感指標(EI)を提案した.Emotional Fitness実験を行い, EIと二次元気分尺度による快適度との間に高い相関関係があることを示した.

MD3-5
脳波特徴抽出を用いたリラクゼーション効果測定手法
○一井 亮介 (福井大学) ,前田 陽一郎 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学)
カオス理論により生成されたサウンドを,人間にとってよりリラックスできる方向に自動的にチューニングするシステムICASの紹介があり,このリラックス度を測る指標として脳波のパワー含有率による3次元状態図に基づく解析法を提案し,様々な状態でのリラクゼーション傾向の変化を調べた.

写真2 発表の様子

人間共生システム2
日時:2010年9月13日(月)16:20-18:00
会場:D会場(広島大学L205)
司会:片上大輔(東京工芸大学) 
セッション参加者:約20人
報告者:梅亮(福井大学)

MD4-1 カオス時系列解析を用いた動物型ロボットの歩容生成法
○土屋 聖也 (東京工芸大学) ,鈴木 秀和 (東京工芸大学) ,西 仁司 (福井工業高等専門学校)
AIBOを使用して人が動物らしいと感じる4脚歩行ロボットのための歩容生成を目指す.最適領域が複合特徴領域により構成されていることに着目し,目指す歩容が持っている特徴群を1つずつ最適化することで歩容生成を行う.さらに,アンケートにより人の感性を評価に加えることで人が動物らしいと感じる歩容パラメータの決定を行う.生成された歩容に対してカオス時系列解析によるバランス評価を評価値とし,再度GA を用いた実環境への適応学習を行い動物らしい歩容の実現を目指す.

MD4-2 ファジィ契約ネットに基づくマルチエージェントロボットのためのタスク割当
○梅 亮 (福井大学) ,前田 陽一郎 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学)
自律移動ロボットが複数存在するマルチエージェントシステムにおいて,ファジィ推論を組み込んだ契約ネットプロトコル(Fuzzy ContractNet:FCN) に基づいたロボット間通信によって協調制御を実現する手法をすでに提案している.マルチエージェントロボット環境であるサッカーロボットのパスタスクを例題として,契約ネットの入札,落札の判断をファジィ推論を用いることで,人間が行うような柔軟なタスク割当による協調行動の実現を目指す.また,提案手法の有効性を検証するため,ロボットサッカーシミュレータを用いて実験を行った.

MD4-3 スパイキングニューラルネットワークを用いた人間状態計測システム
○大保 武慶 (首都大学東京) ,久保田 直行 (首都大学東京)
各種センサノードの反応パタンからセンサ間の関係性を学習および特徴量の抽出をリアルタイムに実現するために,各センサノードに対して脳の神経モデルに基づくスパイキングニューラルネットワークを適用した人間の状態推定手法および学習手法の提案を行った.さらに,本提案手法に対して人間の居住環境を想定した空間内で実験を行った.

MD4-4 アージ・システムに基づく自己充足モデルのための行動学習
○飯星 貴文 (名古屋工業大学) ,安藤 照朗 (中京大学) ,加納 政芳 (中京大学) ,中村 剛士 (名古屋工業大学)
自己充足モデルを拡張し,ユーザ入力に対して柔軟かつ適切な行動出力を行うモデルを提案する.提案モデルでは,行動出力判断のモデルとして,多項ロジットモデルを用いる.多項ロジットモデルは,結果変数(行動)の生起確率を連続変数である説明変数(エージェントの状況認知)を用いてモデル化するため,人間の「判断」のモデル化に適した数理モデルである.

MD4-5 貢献度評価に基づくマルチエージェント強化学習の報酬分配
○張 坤 (福井大学) ,前田 陽一郎 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学)
マルチエージェント強化学習で起こる報酬分配問題において,個体行動評価とファジィルールを用いる協調行動評価により,個々のエージェントの全ての行動を評価し,個体貢献度とシステム全体に対する協調貢献度を求めて,個々のエージェントに報酬を分配するマルチエージェントProfit Sharing(MAPS)手法を提案する.報酬を与えるタイミングや,個体からの報酬と集団からの報酬のバランス等に関する質問が出た.


人間共生システム3
日時:2010年9月14日(火)9:00-10:20
会場:D会場(広島大学L205)
司会:高橋泰岳(福井大学)
セッション参加者:約20人
報告者:滝僚平(福井大学)

TD1-1 9:00-9:20
TD1-1 MDDによるロボット行動則の表現
○酒井 将司 (名古屋工業大学) ,戸本 裕太郎 (名古屋工業大学) ,加納 政芳 (中京大学) ,中村 剛士 (名古屋工業大学)
近年,ヒューマノイドロボットへの関心が高まってきているが,多数の関節を同時制御する必要があるため制御が困難であるという問題がある.本研究では人間には分かりにくいロボットの制御を単純に分かりやすく表現することを目標とし,多値決定グラフ(MDD)を用いてロボットの行動則を示す方法を提案した.また,最適なMDDを探索するために遺伝的プログラミングを用いてMDDを進化させることでロボットの行動則を獲得していた.今後の課題として立ち上がり動作のような単純な動作ではなく,より複雑な動作での応用を目指していることを述べた.

TD1-2 対話型遺伝的アルゴリズムによる景観と調和する看板配色システム
○井上 博行 (福井大学) ,井上 智恵 (福井大学)
配色は日常生活の中で非常に重要であり,人間の感性・気分に大きく影響している.配色デザインに関する資格試験や多くのノウハウ本も存在しているが,専門知識・経験・センスが必要となることが述べられた.本研究では看板の配色問題に注目し,周囲の景観と調和する看板配色支援システムを構築した.作成したシステムは対話型遺伝的アルゴリズムを用いており,その有効性をアンケート結果により示した.今後は天気や季節も考慮にいれた配色を目指すことを述べた.

TD1-3 リニア型柔軟関節機構D3アクチュエータの開発
○森 悠輔 (東京工芸大学) ,鈴木 秀和 (東京工芸大学)
ロボットが人間と共生する研究が盛んに行われており,人との共同作業や介護をするためにアクチュエータ部の柔軟性が要求されている.柔軟性を欠いた機構では人間に怪我をさせる危険性があるが,現在のソフトアクチュエータはコストや扱いやすさにおいて実用性に乏しいことが挙げられる.森氏らは安価で扱いが容易なサーボモータと複合筋型弾性要素を用い,柔軟関節機構D3アクチュエータの試作機を製作した.ソフトアクチュエータには柔軟性の質・高さが重要なため,任意の負荷変位特性を実現することができるように工夫をし,負荷実験により最適なパラメータの検証を行ったことを動画付きで紹介した.

TD1-4 足踏みインタフェースによるVR歩行環境シミュレータの開発
○橋本 智己 (埼玉工業大学) ,櫻井 友之 (池野通建(株)) ,宇田川 裕二 (NECネッツエスアイ(株)) ,高倉 保幸 (埼玉医科大学) ,浜田 利満 (筑波学院大学) ,赤澤 とし子 (北里大学) ,山本 満 (埼玉医科大学)
5人に1人が高齢者という現状で,認知リハビリテーションにおいて日常生活動作に関する訓練が重要となっている.本研究ではロボットを使ってリハビリテーションを行うことを目指しており,今回は仮想空間上の街中を散策するという歩行環境シミュレータを試作した.本システムはWiiボードとハンドル,PC,ケージから構成されており,その場で足踏みをすることで前進し,ハンドルを切ることで左右に曲がることができる.被験者にレベル1からレベル4の難易度の異なる歩行課題を課し,高齢者と若年者の運動機能と認知機能の比較を行った.今後は例えば東海道53次を歩くといった仮想空間も検討していることを述べた.

各発表ごとに,非常に多くの質問や提案があり,発表者,聴衆者ともに有意義な発表であった.


人間共生システム4
日時:2010年9月14日(火)10:30-11:50
会場:D会場(広島大学L205)
司会:井上博行 (福井大学)
セッション参加者:約30人
報告者:山本壮太(福井大学)

TD2-1 アソシエーション分析における可視化を用いた興味深いルールの探索
○伊藤 晃 (名古屋大学) ,吉川 大弘 (名古屋大学) ,古橋 武 (名古屋大学) ,池田 龍二 (トッパン・フォームズ株式会社) ,加藤 孝浩 (トッパン・フォームズ株式会社)
ルールの探索やルール間の関係性を把握しながら分析することを目的にノード同士の関係をリンクの太さで可視化する手法を提案.メンズスーツの布地によるアンケートのデータからスーツの購入場所と属性の関係,イタリア製の好みと属性の関係をプロファイリングし,有効性を確認した.ノード同士の方向性が無いのではないかという質問に対し,コンヒレンス以外の指標は方向は関係ないとの答えがあった.

TD2-2 ユーザーの印象に基づいた模様画像の自動生成システムの改良
○秋口 俊輔 (富山高等専門学校)

ユーザに対するQ&Aより印象から模様を生成する手法.ニューラルネットワークと遺伝的アルゴリズムを用いて印象入力から模様生成を行う.模様要素2つから繰り返し配置模様,タイル配置模様を生成し,1つから線対称模様を生成する.配置可能な図形が5つ,要素数が60個と多いことや図形が固定的という問題がある.分散と平均を導入することにより,少ない要素数でより自由度の高い模様の生成ができる配置手法を提案した.
再現性が無いが,デザイン的に使いやすさはどうかとの質問に対し,出来上がる図形は違うが,出来上がる印象はだいたい同じという答えがあった.

TD2-3 オノマトペ・シソーラス・マップの提案と実装
○戸本 裕太郎 (名古屋工業大学) ,中村 剛士 (名古屋工業大学) ,加納 政芳 (中京大学) ,小松 孝徳 (信州大学)
擬声語・擬音語・擬感語であるオノマトペを類似関係よりソートされた辞書(シソーラス)に配置する方法を提案された.オノマトペは直感的であるが流行語的,一次的,幼稚な表現のため,辞書に載っていない.それらの類似関係をオノマトペ質感から数値ベクトルに変換することで可視化し,2次元マップ化することにより把握しやすくするためのシステム.スイーツの食感をその音響内に持つオノマトペ間の類似関係を可視化し有効性を確認された.例えば,穀物で作った暖かいスナックや冷たいやわらかい湿気の大目のスイーツなどのようなグループで集まっている.ただし,スイーツに関するオノマトペは人の主観で決定されている.

TD2-4 P300 spellerの速度向上を目的とした入力文字予測システムの実装に関する検討
○継岡 恭子 (名古屋大学) ,高橋 弘武 (名古屋大学) ,吉川 大弘 (名古屋大学) ,古橋 武 (名古屋大学)
2種類以上の刺激後に出る脳の電位の特徴点を使ったブレインコンピュータインタフェースシステムであるP300 speller の速度向上を目的とした入力文字予測システムの実装に関する検討を発表された.ソーシャルIMEの予測変換を組み込み少ないキー操作で入力速度を向上させる手法.コンソールアプリケーションを作成し,マウスクリックによる文字入力(脳波を想定し20%でエラー)で性能評価実験を行った結果,入力時間を削減できた.


人間共生システム5
日時:2010年9月15日(水)10:30-11:50
会場:F会場
司会:西野順二 (電気通信大学)
セッション参加者:約20人
報告者:一井亮介(福井大学)

WF3-1 ファジィ状態分割型Shaping強化学習を用いた自律移動ロボットの行動獲得
○庄瀬 貴大 (福井大学) ,長谷川 大樹 (三菱電機エンジニアリング株式会社) ,前田 陽一郎 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学)
ロボットに学習をさせる手法として強化学習が挙げられるが,非常に多くの学習時間を必要とし,入力の次元が増加するにつれて状態分割が増え学習時間が指数関数的に増加するといった問題がある.Shaping強化学習という報酬を人間が与える手法を用いて,複雑なサッカーロボットの行動獲得を例題としてShapingにおける調教者の報酬授与特性を基に自動化を行ったファジィ状態分割型Shaping Profit Sharing法(SFPS)を提案した.

WF3-2 GPGPUによる多次元ファジィ集合の高速生成
○糟谷 朋広 (電気通信大学) ,西野 順二 (電気通信大学)
多次元空間内に存在するファジィ集合を計算機上に再構築するアルゴリズムを提案されているが,アルゴリズムの過程の中で多次元且つ多変量のデータを処理するために発生する計算量の多さから多次元ファジィ集合構成にかかる計算時間が問題になっている.この問題を解決するためにプログラムのアルゴリズムに並列処理を組み込み,多次元ファジィ集合構成の高速化の有効性を確認した.

WF3-3 ミニチュアロボットを用いた自律分散エージェントのための教示システム
○山本 壮太 (福井大学) ,高橋 泰岳 (福井大学) ,前田 陽一郎 (福井大学)
複数の自律型ロボットの集団行動の学習を目的として,人間のオペレータが複数のミニチュアロボットを直接手で動かし教示することによって人間の経験と直感を生かした学習をするためのシステムを提案した.

WF3-4 多次元ファジィ集合人間行動モデリング
○西野 順二 (電気通信大学)
時間変化にともなう人間行動(発表内容では,人間が5つのボールでジャグリング行っている動作)を多次元のパラメータ空間上の遷移経路としてみたとき,その特性を多次元集合によって表現することを試みられた.


人間共生システム研究会懇親会
日時:2010年9月13日(月)19:30-22:00
会場:西條駅前昭和横丁 夢たろう
幹事:高橋泰岳 (福井大学)
懇親会参加者:35人
報告者:高橋泰岳(福井大学)
FSS2010の初日の夕刻に人間共生システム研究会懇親会が催され,総勢35名の参加者がありました.
予定の人数を大幅に超えたため,特に学生の皆さんには座る場所どころか移動する場所さえない状態で歓談して頂き,大変ご迷惑をおかけしました.
あまりに注文が多いためにビールを頼もうとしたら「今買いにいってます!」,座布団が足りないので座布団を頼んだら「隣の店に借りに行ってます!」とお店の人にも迷惑をかけてしまいましたが,皆さん,楽しんで頂けましたでしょうか.
今後ともどうぞよろしくお願いします.

また,最後になりましたが,FSSの表彰式において昨年の人間共生システム特集号にご投稿された加納先生が,日本知能情報ファジィ学会から以下の論文で「論文賞」をみごと受賞されました!研究会メンバーの大変名誉ある受賞に,心からお祝い申し上げます.

写真4 懇親会の様子
写真5 加納先生論文賞受賞の様子
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H22年度日本知能情報ファジィ学会誌「論文賞」

「感性ロボットifbotの感情空間を用いた感情遷移に伴う表情変化の主観的影響」
知能と情報(日本知能情報ファジィ学会誌),Vol.21,No.5,pp.630-639,2009.
柴田 寛1), 加納 政芳2), 加藤 昇平1), 伊藤 英則1)
1) 名古屋工業大学 2) 中京大学
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