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(立命館大学)
片上大輔
(東京工芸大学)

第24回ファジィシステムシンポジウム(FSS2008)

参加報告

報告者:秋口俊輔(富山商船高等専門学校)

日 時:2008年9月3日(水)〜9月5日(金)
会場:阪南大学 本キャンパス
http://fss2008.mzlab.osakac.ac.jp/fss/uploads/FSS2008access.pdf

 9/3(水)〜9/5(金)の3日間に渡り,阪南大学本キャンパスにて,第24回ファジィシステムシンポジウムが開催されました.また2日目において,人間共生システムのセッションが午前・午後通して4セッション組まれ,本研究会メンバーを含む15名の方々が発表されました.

会場の阪南大学

 9:00からのセッション開始に先立って,前田先生から日本知能情報ファジィ学会誌,2009年10月号に掲載予定の特集論文「人間共生システム」の論文募集についてのお話があり,その後4件の発表がありました.

 まず私,富山商船高等専門学校の秋口がユーザがもつ曲印象から楽曲を自動的に生成するシステムについての発表をさせて頂きました.本システムでは楽曲に対する印象を被験者にアンケート形式で答えてもらうのですが,その際の負担の軽減方法についてや,印象語の抽出方法についてなど,大変参考となるご意見を多数頂きました.

 名古屋工業大学の松井さんからは,感情を取り扱うロボット「ifbot」による動的な表情生成・表出を実現するために,Simple Recurrent Network(SRN)を用いた表情生成モデルに関するご発表がありました.ある表情から他の表情へ,ロボットの表情が変化する際に,徐々に表情が変化することで違和感や不自然さを軽減させることが可能であるとのことで,表情豊かなロボットをムービーで拝見させて頂きました.

 九州大学の松本先生からは,カメラやマイク,床センサーやスピーカーなど,様々な機器が設置されている「ユビキタスホーム」と呼ばれる未来型ハウスにおいて,対話インターフェースを持つ小型ロボット「Phyno」とのインタラクションに関するご発表がありました.被験者であるご夫婦が,Phynoとのインタラクションによって家電製品の操作を行う実験でしたが,実験内容については元より,夫婦の仲の良さが与える影響についてなど,他の発表とは一風異なる質問が多数ありました.

 大阪大学の田村さんは,強化学習などの学習システムにおいて,学習者の試行錯誤の経験だけではなく,観察した他者の行為の報酬を読み取り,他者の行為中の状態価値を推定し,自身の状態−行動価値の推定に利用する手法についてご発表がありました.他者からの明示的な教示無しで自律的に行為の分類が可能であるとの説明について,そのタスクの切り分けについてなどの質問がありました.

 白熱した議論により時間が押してしまい,休憩もそこそこに次のセッションが東京工業大学の片上先生司会のもと開始されました.

司会の片上先生
情動計測の本間さん

 福井大学の加藤さんは情動行動学習システムにおけるストレス反応に関する発表がありました.従来手法におけるネガティブな情動行動が伝わりにくいという問題点について,ストレス反応を示す情動を定式化し行動として表現することで,人工物のストレス反応を表現し,それに対して感性評価を行なっていました.実験環境についての質問がありましたが,感情や感性を取り扱う上で,実験環境の設定方法の大切さや難しさを改めて認識しました.

 同じく福井大学の本間さんからは,ブレインビルダーという簡易脳波計を用いて人間の情動を推定し判定するシステムの発表があり,人間の脳波を用いた客観的な感性評価を行いたいとのことでした.実験環境やパラメータの設定について,いろいろな意見が出されましたが,今後が楽しみな研究であったと思います.

 東京農工大学の田中先生からは,何か他の作業をしながらのコミュニケーションである「ながらコミュニケーション」に関するご発表がありました.意図せず相手の作業を妨害してしまう可能性を考慮して,円滑な会話開始を支援するためのエージェントの試作を行っておられました.アプリケーションの切り替え による作業の切れ目に着目した興味深い研究でした.

 立命館大学の中岡さんからは,「ついクリックしたくなる」バナー広告とはどのようなものかについて,アンケートおよび感性評価を行った結果についてご発表がありました.ここではバナー広告掲載のための費用対効果についての質問がありました.また,私個人的に「ついクリックしたくなる」ということについての要因やその実証方法についてとても興味がありました.

 その後,お昼休みを挟んで電気通信大学の西野先生の司会で3つ目のセッションが開始されました.

 福井大学の長谷川さんは,動物の調教やトレーニングなどに用いられる「Shaping」と呼ばれる概念を導入した強化学習手法について発表されました.複雑なタスクを分割し,調教者を介して徐々に目標行動に行動を分化強化していく様子が,サッカーロボットシミュレータで確認できました.

 東京工芸大学の瀧さんは,動物の動きを規範とした脚軌道を遺伝的アルゴリズムによって最適化し,さらに人間の感性を評価に加えることで動物らしい歩容の獲得する手法についてご発表がありました.「動物らしい歩容」は「効率よく大きな推進力を生み出す歩容」であるという考えが面白く,その実験方法も車輪付きの板を蹴り出し,その移動距離をGAの評価関数とするというユニークなものでした.

 福井大学の梶原さんからは,1音階に存在する12の音を均等に使用して作曲を行う12音技法を用いた音列自動生成システムに関する発表がありました.12の音を均等に使用するという簡単な技法にも関わらず,さまざまな雰囲気を持つ音列が生成されていました.

 福井大学の井上先生からは,人が活動する環境に合わせた音楽提供をしてくれるシステムについてのご発表がありました.音楽を聴いている場所,作業 の内容,その時の気分などを考慮した音楽提供システムの内容について,実験を行った福井ののどかな風景をバックに発表して下さいました.

 そして,立命館大学亀井先生の司会で人間共生システム最後のセッションが開始されました.

 東京工業大学の大村さんから,社会的なエージェントや人間が,社会へ適応するために必要な能力について,暗黙のルールをキーワードとしたご発表がありました.文化的差異を仮想的に体験するBARNGAと呼ばれるゲームが用いられており,このゲームにおいて体験できる異文化体験とその時に獲得される 暗黙のルールとの関係がとても印象的な発表でした.

 電気通信大学の西野先生からは,多次元ファジィ集合として,従来の線形化やクラスタリングでは捨ててしまっていた非線形性をそのまま扱ってしまおうというご発表がありました.多次元データの塊である人間やさまざまな事象というものについて,多次元ファジィ集合を用いて直感的に表現してみましょうと いう内容について,みなさん大変関心を持っておられました.

 そして最後に,関西学院大学の藤原さんによる,擬人化エージェントによるユーザの説得に関するご発表がありました.Web上のショッピングサイト などにおいて,顧客に対する説得的なアピールの友好的な手段として期待されている擬人化エージェントについて,その数と説得効果の関係について報告下さいました.

司会の亀井先生
多次元ファジィの西野先生

 最後に,FSSでの懇親会の後,人間共生システムのセッションにて発表された方々で懇親会が行われました.20名を超える方々が参加され,弾む会話や,もはやお馴染みの西野先生のパフォーマンスなどとても楽しい一時でした.

 人間共生システムの全てのセッションを通して,会場に入りきらないほどの方々が参加され,また非常に活発な質疑応答が行われていました.SCIS& ISIS2008や福井で開催予定のHSSワークショップにおいても今回同様,またはそれ以上に活発な研究会となるよう期待して,報告を終わります.

企画セッションプログラム (FSS2008プログラムより)

2日目 【9月4日(木)】

9:00〜10:20
TD1 人間共生システム 1(企画)  企画者:前田 陽一郎,片上 大輔,井上 博行
司会:前田 陽一郎(福井大学)
TD1-1
ソフトコンピューティング手法を用いた曲印象からの楽曲自動生成システムの構築
秋口 俊輔(富山商船高等専門学校)
555
TD1-2
SRNを用いた感性ロボットのインタラクティブ表情生成
松井 裕紀(名古屋工業大学) 加納 政芳(中京大学) 加藤 昇平 伊藤 英則(名古屋工業大学)
561
TD1-3
家庭共生ロボットの対話インタフェース・コミュニケーションに対する努力
松本 斉子(九州大学) 上田 博唯(京都産業大学) 山崎 達也(情報通信研究機構)
567
TD1-4
価値システムに基づく他者行為観察と自己行動学習の循環的発達
田村 佳宏 高橋 泰岳(大阪大学) 浅田 稔(大阪大学/JST ERATO)
572
10:30〜11:50
TD2 人間共生システム 2(企画)  企画者:前田 陽一郎,片上 大輔,井上 博行
司会:片上 大輔(東京工業大学)
TD2-1
自律エージェントのためのストレス反応を有する情動行動学習システム
加藤 進 前田 陽一郎(福井大学大学院)
578
TD2-2
ファジィ情動推論システムのための人間の情動計測実験
本間 雄仁 前田 陽一郎(福井大学大学院)
582
TD2-3
オンラインながらコミュニケーションのための円滑な会話開始支援エージェント
田中 貴紘 藤田 欣也(東京農工大学大学院)
586
TD2-4
「ついクリックしたくなる」バナー広告の感性評価およびそのモデル構築
中岡 伊織 氏平 淳子(立命館大学) 串田 淳一(立命館大学大学院) 亀井 且有(立命館大学)
590
14:40〜16:00
TD3 人間共生システム 3(企画)  企画者:前田 陽一郎,片上 大輔,井上 博行
司会:西野 順二(電気通信大学)
TD3-1
自律移動ロボットの行動獲得のためのファジィ状態分割型Shaping強化学習
長谷川 大樹 前田 陽一郎(福井大学大学院)
596
TD3-2
人間の感性に基づく動物型ロボットのための4脚歩容生成法
瀧 晃司 鈴木 秀和(東京工芸大学) 西 仁司(福井工業高等専門学校)
600
TD3-3
12音技法に基づく遺伝的アルゴリズムによる音列の自動生成
梶原 悠介 前田 陽一郎(福井大学大学院)
604
TD3-4
環境に合わせた音楽提供システムに関する一研究
井上 博行 吉村 誠(福井大学)
610
16:10〜17:10
TD4 人間共生システム 4(企画)  企画者:前田 陽一郎,片上 大輔,井上 博行
司会:亀井 且有(立命館大学)
TD4-1
社会的エージェントのための人間の社会スキルの分析と検討
大村 英史 片上 大輔 新田 克己(東京工業大学)
616
TD4-2
多次元ファジィによる人間事象の表現
西野 順二(電気通信大学)
622
TD4-3
マルチエージェント説得におけるエージェント数と説得効果
門脇 克典 藤原 規行(関西学院大学) 小林 一樹(信州大学) 北村 泰彦(関西学院大学)
624