「人間共生システム研究会」第5回研究会
参加報告
報告者:高橋泰岳(福井大)
日 時:2009年7月17日(金) 10:00〜15:30
会場:筑波大学 筑波キャンパス
第三学群L棟(工学システム学類棟)3階3L307セミナー室
10:00からのセッション開始に先立って,前田先生から開会の挨拶 研究会の活動内容・状況・今後の予定についてのお話があり,その後5件の発表がありました.
まず,中京大学の加納先生から「介助されるロボットbabyloidの開発の試み」というタイトルでご発表がありました.これからの高齢化社会の中で高齢者の心が抱える問題があるが,その中で様々な喪失体験が存在する.様々なアプローチがあるが要介護者がもつ自律を失い介護者に依存せざるを得ない状況に対して心理的苦痛は「介護する側」から「介護される側」へ役割移行に伴うストレスによるものである.そこで要介護者に介護されるロボットBabyloidを開発し,要介護者がロボットを「介護する側」になることでこの心理的苦痛を和らげる.この高齢者に介護されるロボットの試作器一号について報告をされました.参加者から,このロボットを介護できなくなったときにさらに喪失感があるのではないか,また,飽きないのか等の質問がありました.
次に福井大学長谷川さんによるサッカーロボットの行動戦略獲得のためのファジィ状態分割型Shaping強化学習の研究発表がありました.生物の学習メカニズムから工学的模倣を行うために動物の調教に使われている手法Shapingを取り入れることで,効率的に行動学習が行えることが示されました.東工大の片上先生から総報酬を一定にするようにしたらShapingの効果をうまく評価できるのではないかというコメントを頂きました.
電通大の今井先生から,ユーザとロボットに対して視覚的遮蔽のある環境下においてロボットがユーザの視界を推定して振る舞った場合のユーザの印象の主観的評価についてのご発表がありました.ロボットと人間との「状況認識のずれ」に配慮した振る舞いが人間との円滑なコミュニケーションの実現において重要でことを指摘.実験によりロボットからは見えない位置にあるぬいぐるみに対して話すユーザに対応することで「親近性」を始めとする好印象を与えることを確認されました.東工大の片上先生から,人間はロボットがそれほど気を利かすとは思っていないときは混乱するかもしれない,ロボットの見かけ(振る舞い)で知的か知的でないかを人間が判断してしまうというコメントを頂きました.
首都大学東京の寄田さんから,GNG(Growing Neural Gas)を用いた肌色抽出(ボトムアップ処理)と局所的遺伝的アルゴリズムを使った画像上の顔の追跡(トップダウン処理)を組み合わせ,顔らしさの判定をファジィ評価を利用し,人物追跡を行うロボットビジョンシステムの研究紹介がありました.
最後に東工大の片上先生から,人間共生の世界において機械が人と柔軟にコミュニケーションするためにいかに集団に適応するかという観点から,集団適応知能についての検討について報告がありました.社会的なエージェントやロボットは知能指数(IQ)だけではなく心の知能指数(EQ)が重要であること.ロボットの社会性の要件,社会的環境に置ける学習の問題点,集団適応の定量的測定法,合意形成論,自由のための自由の規制,等に対する議論が展開されました.
昼食後,筑波大学 鬼沢研究室の見学をさせていただきました.研究室所属の学生様達に以下のトピックについて実演を交えて説明いただきました.
- 親しみのわくパートナーシステム
- 言語を用いた似顔絵生成システム
- 演奏者の好み
- 技術レベルを考慮した自動編曲システム・ユーザの感性を反映したインタラクション服飾システム
その後,同大学の山海研究室の見学をさせていただき,山海先生よりご講演頂き,貴重な話を頂けました.
また,研究学園駅にあるサイバーダインスタジオに移動し,スーツの実演や,スーツの一部を実際に試させていただくことができました.また,オリジナルムービーの鑑賞もできました.
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山海先生による講演の様子 |
サイバーダインスタジオの入り口 |
「人間共生システム研究会」第5回研究会
プログラム(開催案内はこちら)
10:00〜10:10 開会のあいさつ
人間共生システム研究会 代表幹事 前田陽一郎(福井大学)
10:10〜12:00 一般発表 司会:片上大輔(東京工業大学)
10:10〜10:30 HSS-5-1
「介助されるロボットbabyloidの開発の試み」
○加納政芳,清水太郎(中京大学)
10:30〜10:50 HSS-5-2
「サッカーロボットの行動戦略獲得のためのファジィ状態分割型Shaping強化学習」
○長谷川大樹,前田陽一郎(福井大学大学院工学研究科)
10:50〜11:10 HSS-5-3
「ユーザ及び自身の視界を推定可能なロボットの振舞が与える印象の主観的評価」
○今井 順一,金子 正秀(電気通信大学大学院電気通信学研究科電子工学専攻)
11:10〜11:30 HSS-5-4
「ファジィ評価を用いた進化的ロボットビジョン」
○寄田明宏,久保田直行(首都大学東京大学院システムデザイン研究科)
11:30〜11:50 HSS-5-4
「人間共生のための集団適応エージェント」
○片上大輔(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
12:00〜13:00 昼食
13:00〜13:30 鬼沢研究室の見学
13:30〜14:00 山海研究室の見学
(14:00〜14:30 移動)
14:30〜15:30 サイバーダインスタジオの見学
(入場料大人500円)
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