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前田陽一郎
(立命館大学)
片上大輔
(東京工芸大学)

第25回ファジィシステムシンポジウム(FSS2009)
(HSS研究会企画セッション「人間共生システム」)

参加報告

報告者:高橋泰岳(福井大)

日 時:2009年7月14日(火)〜7月16日(木)
会場:筑波大学 筑波キャンパス
FSS2009

 2009年7月14日から7月16日の3日間に渡り,筑波大学筑波キャンパスにて,第25回ファジィシステムシンポジウムが開催されました.また2日目において,人間共生システムのセッションが午前・午後通して3セッション組まれ,本研究会メンバーを含む11名の方々が発表されました.

会場の筑波大学筑波キャンパス
亀井先生のご発表の様子

 第1セッションでは福井大学の前田先生の司会で始まりました.まず,立命館大学の亀井先生による「Emotional Fitness(心の健康維持)」のためのトレッドミル運動における最適運動強度のご発表がありました.Emotional FitnessはPhysical Fitnessと対になる言葉で,エクスサイズによってストレス解消を狙う活動を指しますが,個人個人のの適切な運動強度を調べる手法をご提案されました.

 次は,大阪大学の島田による視野推定に関する研究を,島田が卒業で不在のため,代わりに私,高橋が発表させていただきました.自己の感覚に基づく行動学習に基づいて他者行動を理解するためには,他者行動の観察から自己の感覚(視覚)にマッピングする視野推定能力が必要だが,幼児の模倣発達から推測されるように視野推定能力は生得的ではなく発達する中で獲得されるものだと考えられる.そこで自己の行動獲得を強化学習によって行うのと同じように,強化学習の状態価値推定誤差に基づいて視野推定システムのパラメータを更新する手法を提案しました.立命館大学の谷口先生から行動学習と模倣の順番はそれでよいのか?という質問を頂きました.

 続いて,大阪大学の田村から強化学習の状態価値を利用して人間行為を観察し,自律的に行為の範疇化と自己行動学習のフィードバックを行い,観察をしない場合よりも観察を通して認識と行動学習を繰り返した方が安定して効率的に行為学習を行える手法を提案しました.人間が学習するロボットと同じ状態価値を持つと仮定することに対する質問と,状態価値ではなく状態遷移の予測で行為認識するシステムとの比較に関する質問を頂きました.

 本セッションの最後に福井大学の井上先生からファジィ決定木を用いた花束の感性ルール抽出のご発表を頂きました.従来のC4.5ではファジィ的な表現が難しく,少数サンプルを無視せざるを得ませんでしたが,それ確信度で表現できるファジィC4.5を提案することによってこの問題を解決できることを示されました.これを花束の感性分析に応用し,人が見てわかりやすい感性ルールが抽出できることを示されました.参加者から分割を進めていくときにそれを止める基準はどこかという質問がありました.

司会の前田先生
司会の片上先生

 一旦休憩を入れて,人間共生システムの第2セッションが片上先生の司会で始まりました.まず,情報通信研究機構の岩橋さんから人とロボットの共有信念の推定に基づいた相互適応的な発話生成に関するご発表がありました.コミュニケーションする際は信念を共有していると思いこんでいるが,この共有信念を共有信念をオンラインで推定し,意味伝達と心的状態推定のトレードオフを考えながら,より自然な発話を可能にするシステムを提案されました.

 次に福井大学の加藤さんから,全方向異動ロボットを操作する人間による操作特性をCMACによって獲得する研究が紹介されました.RoboCup中型機リーグに出場しているロボットを用いボールを追いかけるタスクをジョイスティックで人間に操作してもらい,その操作特性を獲得させました.電通大の西野先生から学習が行かない場合はそれは操作に不慣れなオペレータのためか,それとも学習機構に問題があるのかという質問が,また,佐賀大の泉先生からは3Dのジョイスティックは斜めに正確に倒すのは難しいので,学習結果にその影響があるのでは,という質問を頂きました.

 また,同じく福井大学の長谷川さんが,ファジィ状態分割型Shaping強化学習を用いたサッカーロボットの戦略獲得の研究をご発表されました.生物の学習メカニズムから工学的模倣を行うために動物の調教に使われている手法Shapingを取り入れることで,効率的に行動学習が行えることが示されました.電通大学の西野先生から調教者が間違ったときはシステムが対応できるのかという質問,また,東工大の片上先生からは調教者のShaping能力と手法自体の性能の区別が明確にわかると良いというコメントを頂きました.

 本セッションの最後に東京工芸大学の瀧さんから,ロボットセラピーの観点から人間の感性に基づいた4足歩容生成に関する研究のご発表がありました.福井大学の前田先生らから,ロボットにとって最適な歩容が動物らしいと見えるとは限らないが,GAで作った歩容が生物らしいのか.また,生物の最適化をみて生物らしいと思うが,ロボットの最適化を通してそれを生物らしいと思うだろうか,という質問がありました.また,電通大の西野先生から動物らしさはセラピーとはすこし異なるかもしれない,例えばファイアボールのドロッセルお嬢様は十分愛らしく見えるとのコメントを頂きました.

司会の井上先生
西野先生のご発表の様子

 昼食を挟み,人間共生システムの第3セッションが福井大学の井上先生の司会で始まりました.まず,西野先生から,人に可能な範囲で身体的/スキル負担を課すことを前提にしたシステム設計パラダイムである「スキルトロニクス」と,この考え方に基づいた新種の多目的型ゲームに関する提案の発表がありました.従来のゲームはスキルが必要であったが,スキルトロニクスなパズルでは解が一つではなく,道具・設問・身体スキルの3者関係であり,個々の人間が持つスキルに合わせた解法を生み出せる,というものです.

 次に,富山商船高等専門学校の秋口先生から,ユーザーの印象に基づいた模様画像の自動生成システムの構築についてのご発表がありました.まず,ニューラルネットによって模様パラメータから事前アンケート調査によって得られた印象情報を出力するマップを生成し,これをもとにGAによって入力された印象をもつだろう模様(パラメータ)を出力するシステムを提案されました.

 最後に筑波大学の三河先生から図書館司書ロボットについてご発表がありました.人間の意識状態をモデル化したActivation-Input-Modulation(AIM)モデルを用い,外部刺激が多い時は外部情報を優先して処理し,少ないときは内部情報を優先して処理するシステムを構築することで,省電力で稼働するロボットを実現されました.受付では人間行動予測をLRFによる移動物体の検出とカメラを用いた環境情報収集によって行い,Juliusによって音声認識を行うことで対応を行い,Web検索や情報提供を行う説明がありました.

 最後に,FSSでの懇親会の後,人間共生システム研究会の関係者で懇親会が行われました.多くの方々が参加され,お馴染みの西野先生のパフォーマンスなどで大変楽しみました.

企画セッションプログラム (FSS2009プログラムより)

2日目 【9月15日(水)】

第A室 (3A202)
2A1 企画セッション (公募型)
人間共生システム1
企画者: 前田 陽一郎 (福井大学),片上 大輔 (東京工業大学),井上 博行 (福井大学)
司会: 前田 陽一郎 (福井大学)
2A1-01
9:00〜9:20
「Emotional Fitness(心の健康維持)」のためのトレッドミル運動における最適運動強度
亀井 且有 (立命館大学), 山本 有華里 (立命館大学), 中岡 伊織 (立命館大学), 串田 淳一 (立命館大学), クーパー エリック (立命館大学), 大場 和久 (日本福祉大学)
2A1-02
9:20〜9:40
異なる体格間での状態価値推定誤差に基づく視野推定能力学習
島田 皓樹 (大阪大学), 高橋 泰岳 (大阪大学), 浅田 稔 (大阪大学, JST)
2A1-03
9:40〜10:00
状態価値に基づく人間行為観察と自己行動学習の循環的発達
田村 佳宏 (大阪大学), 高橋 泰岳 (大阪大学), 浅田 稔 (大阪大学,JST)
2A1-04
10:00〜10:20
ファジィ決定木を用いた花束の感性ルール抽出
井上 博行 (福井大学), 王 冠 (福井大学)
2A2 企画セッション (公募型)
人間共生システム2
企画者: 前田 陽一郎 (福井大学),片上 大輔 (東京工業大学),井上 博行 (福井大学)
司会: 片上 大輔 (東京工業大学)
2A2-01
10:30〜10:50
人とロボットの共有信念の推定に基づいた相互適応的な発話生成
岩橋 直人 (情報通信研究機構), 中村 慎也 (電気通信大学), 長井 隆行 (電気通信大学)
2A2-02
10:50〜11:10
全方向移動ロボットの人間による操作特性のCMAC学習
加藤 進 (福井大学), 前田 陽一郎 (福井大学)
2A2-03
11:10〜11:30
ファジィ状態分割型Shaping強化学習を用いたサッカーロボットの戦略獲得
長谷川 大樹 (福井大学), 前田 陽一郎 (福井大学)
2A2-04
11:30〜11:50
人間の感性に基づく動的干渉下における4脚歩容生成
瀧 晃司 (東京工芸大学), 鈴木 秀和 (東京工芸大学), 西 仁司 (福井工業高等専門学校)
2A3 企画セッション (公募型)
人間共生システム3
企画者: 前田 陽一郎 (福井大学),片上 大輔 (東京工業大学),井上 博行 (福井大学)
司会: 井上 博行 (福井大学)
2A3-01
15:00〜15:20
スキルトロニクスなパズルとその解法
西野 順二 (電気通信大学)
2A3-02
15:20〜15:40
ユーザーの印象に基づいた模様画像の自動生成システムの構築
秋口 俊輔 (富山商船高等専門学校)
2A3-03
15:40〜16:00
図書館司書ロボットの開発
三河 正彦 (筑波大学), 吉川 雅博 (筑波大学), 辻村 健 (NTTアクセスサービスシステム研究所), 田中 和世 (筑波大学)